本研究においては、低温かつ磁場中での局所磁場分布測定システム開発のために、ヘリウムフロー型の低温冷却装置、液体窒素冷却型マグネット、偏向顕微鏡などの装置を整備し、高温超伝導体の様々な単結晶試料の局所磁場分布について測定を行った。測定は主に磁気光学効果の一つであるファラデー効果を持つ磁性薄膜を用いて、2次元磁場分布をコントラストの画像データとして取り込むことにより行った。 2次元分布については、試料直上に磁性薄膜をグリースで固定することにより、4Kまでの温度、2500Oeまでの磁場範囲での超伝導体の臨界状態の磁場分布測定に成功した。ここで位置の分解能は光の波長程度である5000Å、磁場分解能は数G程度であった。 3次元分布については、試料移動機構を自作し、Z軸ステージにより試料と磁性薄膜の距離を可変にした。磁性薄膜のホルダと試料ホルダのそれぞれの部分に温度計を取り付けそれぞれの温度をモニタしながら測定を行った。しかしながら、この改造により試料部分の冷却と外部(Z軸ステージと直結している)からの熱流入のバランスをとるのが非常に困難であることが分かった。この点を克服するために、試料ホルダの改良などを行ったが、試料の最低到達温度は60K程度、磁性薄膜部分で40K程度までと限られた温度範囲でのみ測定が可能である。 この様な測定から、試料内部における電流分布をかなりの精度で決定することが可能になり、特にいくつかの高温超伝導体の単結晶試料では、結晶構造から予想される特徴的な臨界電流密度の異方性の定量評価に初めて成功し、局所磁場の測定の有用性を示すことができた。
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