研究概要 |
本年度は,マグネトロンスパッタリング装置および超高真空分子線エピタキシ-装置を用いて薄膜や人工的規則合金の作製を行ない,その結晶構造,磁気異方性,磁気光学スペクトルを調べた。以下に,その結果をまとめる。 1.非常に大きなKerr回転角を示すMnPt_3規則合金をベースに垂直磁気異方性を誘導するため,CoPt_3規則合金と組み合わせた人工格子,すなわちMnPt_3/CoPt_3規則合金人工格子のMBE成膜を試みた。成膜温度を300℃以上に上げることにより,規則相の生成が認められ,300℃で角形比のよい垂直磁化膜が得られた。界面の拡散や層厚の分布等をXRDパターンのプロファイルフィッティングより解析し,かなり界面のシャープな人工格子が作製できていることを確認した。また,磁気光学効果については,成膜温度の上昇とともに1.2eVにおけるKerr回転角が増大した。これは,MnPt_3規則相の生成によるものと考えられる。Kerrスペクトルは全般的に,予想されたものより小さくなったが,これは,MnPt_3層の規則度が不十分であること,および界面での拡散層の存在によるものと考えられた。 2.自然界に存在しない新しい規則合金を生成することを目的にPt/Mn/Co/Pt人工格子の成膜を行った。試料は,単結晶Pt(111)面上に各層を1原子層ずつ成長させ,その構造を成膜中のRHEEDと成膜後のXRDによって調べた。膜は,部分的にAuCu_3型の規則相を形成し,XRDパターンには,きれいな超格子線が現われた。Kerrスペクトルについては,1.2eVと4.2eVにピークを持つものとなったが,値としては,0.1から0.2度程度であまり大きな値は示さなかった。
|