研究概要 |
電気光学位相格子とそれを用いた単一方向光ビーム走査器について,分極反転を用いた疑似速度整合形が適用可能かどうかの検討を行うと同時に,その場合の反転形状や電極形状の最適化設計などを行い,試作と動作確認の基礎実験を行うことを計画した.電気光学結晶に設けたマイクロストリップラインをマイクロ波が走行すると結晶内には位相格子が形成される.これによるラマン・ナス回折では多数の回折光が形成されるが,それぞれの周波数はマイクロ波の周波数だけ異なっている.各回折光の強度および位相は位相変調と同様にベッセル関数で記述できるので,フーリエ変換レンズを通して得られる面でこれらの回折光の位相を同相に調整することによって,再びレンズに通すことによってそこには一方向にだけ偏向(走査)される光ビームが形成される. 従来の電気光学位相格子では変調能率を上げるために相互作用長を長くしようとすると,マイクロ波の高次モードが形成されやすく動作の安定性に問題があった.そこで新たに結合線路形を用いてマイクロ波のモードを確定し,さらに分極反転による疑似速度整合を組み合わせて変調能率を改善することを考えた. マイクロ波結合線路の動作特性を確認するため,結合線路形位相変調器をLiTaO_3結晶を用いて構成し,動作実験を行った.まず光位相変調を行うことによって各線路に加わる電圧と位相を測定することを念頭に分極反転による疑似速度整合素子を試作した. 16.25GHzでの実験の結果,最大で約9radの位相変調指数を得た.従来にない大きな変調指数の位相格子が本構成で可能になるものと期待される.変調能率は給電線に近い側よりそれぞれ120,57mrad/トD8W-1D8であった.これにより,試作素子において結合線路をマイクロ波が通過していることがわかった.ただし変調能率には差があり,今後一層の改善が必要である.また,線路間に光ビームを通した偏向実験によって,2線路間は偶に結合しているという見通しを得た.分極反転を利用すれば変調の符号は自由に制御できるので,各線路間のマイクロ波位相関係がどのようであっても位相格子は設計できる.今後はさらに線路の数を増し,位相格子の試作と実験に進む予定である.
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