研究概要 |
電気光学位相格子とそれを用いた超高速の単一方向ビーム走査器について研究を行った.進行波位相格子によるラマン・ナス回折では多数の回折光が形成されるが,それぞれの周波数はマイクロ波の周波数だけ異なっており,各回折光の位相を同相に調整することによって,一方向にだけ偏向(走査)される光ビームが形成される. 分極反転を用いた擬似速度整合形がこのような位相格子の形成に適用可能かどうかの検討を行い,斜周期の分極反転を行うことによって擬似速度整合されたマイクロ波動作の進行波位相格子が形成できることを,本年度新たに見いだした.この構造によれば相互作用長に制限がないため,変調指数を飛躍的に向上できると考えられる. この新しい進行波位相格子の動作を確認するため,LiTaO_3結晶を用いて周期が0.2mmから0.6mm程度の斜周期の分極反転を形成し,素子の試作を行った.周波数16GHzにおいてその動作実験を行い,この新しい構造の進行波位相格子の変調指数が6radと従来の数倍以上であることが確認された.さらに,この素子を用いて単一方向光偏向器を周波数面上での強度制御を用いて構成し,60psを周期として一方向に光ビームが走査されるという基本的な動作を実験的に確認することに成功した. 試作した光偏向器の基本性能はほぼ実用レベルにあると考えられるので,ピコ秒領域の新しい光制御法が開発できると期待される.今後は,開発したシステムをより使いやすいものにするための小型化,特定の応用分野を念頭に置いたシステム設計が重要になると考えられる.
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