研究課題
基盤研究(A)
気相分子と表面の散乱方向分布は通常は余弦則に従うとされている。我々は、金属表面の超平担化と超清浄化によって真空内壁表面における残留気体分子の鏡面散乱分布を実現することを目的として、表面研摩、清浄化処理、レーザー共鳴イオン化法による分子検出法、分子散乱方向分布測定などの開発研究を実施した。初年度と2年度に行われた機器開発と試料処理技術を基にして、最終年度は、細管から飛び出す分子の方向分布測定を行った。我々は、分子の表面散乱過程が真空配管の通過確率に与える効果を総合的に評価する上でこのような測定が有用であると考えている。昨年度に開発した多光子共鳴イオン化技術によれば、極高真空領域に至る広い圧力範囲で細管から出射する水素分子の方向分布に加え、温度、分子の振動・回転状態を決定することができるため、従来は不可能であった細管コンダクタンスに与える分子の内部自由度の影響を定量的に明らかにすることが可能となった。方向分布測定は、内径2.8mm、長さ40mmの白金製細管を試料として行われた。多光子共鳴イオン化領域に対する細管出口の相対位置を外部駆動機構により変化させることにより吹き出しビームの角度分布測定を行った。また、レーザー光をシート状に拡大し、二次元的な方向分布を単一レーザーパルスによって行う試みを、水素分子より励起エネルギーの低い一酸化窒素分子について試みた。現在、測定された吹き出しビームの形状を細管内壁における散乱方向分布を基に、モンテカルロ法により計算された方向分布との比較を現在進めており、真空配管における分子散乱の方向分布を定量的に明らかにすることが技術的に可能となった。今後、細管以外のより清浄化と平担化の容易な真空配管要素についての方向分布測定を進める予定である。平担化処理と清浄化に関しては、鏡面研摩、イオン衝撃清浄化、超高真空アニールなどの要素プロセスの評価を走査トンネル顕微鏡により行い、原子尺度で平坦化されたテラス構造の生成条件を明らかにすることができた。
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