研究概要 |
量子力学理論に基づいて,非経験的に獲得される原子間相互作用の計算値を,一つの確実な知識であると考えて,原子間ポテンシャルを評価するデータベースの枠組みを構築するための基礎的検討を行って,つぎの成果を得た. (1)スーパーコンピュータ(SX-3)と導入した計算サーバ(IBM RS6000)上で稼働する,第一原理計算プログラムの高速化を進め,前者で2.5GFlops,後者で0.13GFlopsを達成した.なお、計算手法は,Car-Parrinello法を主体として,共役勾配法,擬ポテンシャルを踏まえ,Noseの方法による温度制御を行っている.さらに平面波展開の項数を減らして計算を高速化,効率化するために,原子の種類に応じてソフト系擬ポテンシャルを選択導入するデータベース構築のための基礎的事項の検討も終えた. (2)開発を進めている第一原理計算を用いて,SiC,Al,AlN,Siの各物性値(格子定数,体積弾性率,フォノン振動特性等)の評価を行い,適切な値が獲得できることを実証した. (3)AlのΣ=5粒界の安定構造とエネルギの第一原理評価を行うと共に,埋込み原子モデル(EAM)と有効媒質モデル(EMM)により獲得される値と比較し,EMMは妥当な値を与えるが,EAMは界面構造の評価には必ずしも適さないという結果を得た. (4)AlNクラスターに対してLCAO分子軌道計算(LCAO-MO)を当てはめ,3体型のポテンシャル関数を決定し,それをベースにして熱伝導特性の評価を行った.その結果より,AlNセラミックスの熱伝導率に対する格子欠陥依存性,不純物依存性について検討を加えた.
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