研究概要 |
空間的に階層構造をなしているポリマーの,変形に伴うマイクロスケールからメゾスケールの構造の変化及び成長を,モノマーの挙動の分子動力学によるモデル化とモノマーの集合体としての高分子鎖の挙動のモデル化,ならびにメ-ゾスケールの高分子鎖の回転及び配向によるマクロスケールの異方性応答を検討し以下の結果を得た。 (1)高分子鎖の結合部分,節,の外力による変化を現象論的に表現し得るメゾスケールモデルを構築することができた.数値シミュレーションと実験結果の比較により,従来のモデルにおいて表現が困難であったせん断変形に対しても適用できることが確認された. (2)一般応力状態における,高分子材料の変形挙動のシミュレーションプログラムが構築され,(1)のシミュレーションを可能とした. (3)電子顕微鏡により高分子材料の表面の性状観察を行い,マクロな変形の進行とミクロな変形挙動の関係を検討した.得られたデータの定量化を行うことにより,表面性状の変化と高分子材料のミクロな変形の関係を一部明らかにすることが出来た. (4)モノマーについて,その構造を解析し必要な原子間ポテンシャルを求めるべく準備中である.さらに,複数個のモノマーの集合体として,高分子鎖単位とそれを節で連結した高分子鎖モデルを構築中である. 以上のように,当初の研究計画に対して,顕微鏡による実験的検討と現象論的考察による高分子材料のメゾ,マクロスケールのモデルの構築とその実験的検証はできたものと考える.しかしながら,分子鎖を構成するモノマーの構造とその応答,さらには,高分子鎖のメゾスケールのモデル化についての具体的な検討は行っているが,数値シミュレーションあるいは実験結果との比較検討については現在進行中である.
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