研究概要 |
平成7年度において開発してきたレーザ光弾性法について,He-Neレーザのフォーカッシングおよび試料あるいは光学系を非回転で計測する方法を確立した.非回転で試料の主応力差と主応力方向を同時に計測できることにより,空間分解能を飛躍的に向上されることが可能になる.平成8年度では,前年度の成果をもとに光学系と装置本体の設計および試作を行い,理論的な到達分解能に近い9マイクロメータの空間分解能が得られた.赤外線光源についてもフォーカッシングを試み,シリコンとGa-As単結晶について,光弾性定数の結晶面および結晶方位依存性を求めた.さらに,主応力差と主応力方向分布から応力成分を分離するための応力解析プログラムを作成した.具体的には,主に以下の内容について充分評価できる結果が得られた. (1)0.01mm以上の空間分解能で応力場を計測することができた.また,試料のスキャン部分を自動化することで,さらに空間分解能を改善できる可能性があることがわかった. (2)主応力差と主応力方向分布から応力成分を分離するために,せん断応力差積分法を用いた実験応力解析手法を,本研究で得られた実験結果に適用するプログラムを作成した.また,有限要素法による応力解析結果と実験応力解析結果を比較した結果,良い一致が見られ,本研究の妥当性が検証された. (3)シリコンの{100},{110}および{111}面とGa-As単結晶の{100}面の光弾性定数の決定した.今後,さらに詳細な実験行うことで,力学的に異方性を有する単結晶の応力計測および応力解析が可能なことがわかった. 以上,本研究の成果は薄膜や結晶内の微視的応力場や,生体膜・細胞内の流動現象の解明などに応用されうることが今後期待できる.
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