研究概要 |
本研究では、凝集相における光化学反応の可能性を追求している。すなわち、材料ガスの凝集相に対して光のエネルギーのみを作用させることによってどのような結果が得られ、従来の気相からの成膜法と比較してどのような違いがあるかを明らかにすることが目的である。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)各種材料ガスの凝集相をエキシマレーザによって光分解するため、専用の反応容器を設計、製作した。この際、(a)冷却箇所が成膜基板のみに限られること、(b)外部からの熱流入を極力避けること、(c)種々の材質の基板が設置できること等に重点を置いておいた。 (2)上記容器にて成膜実験を行い、SiH_4凝集相から合成石英基板上に結晶性の良いmc-Siを生成させることに成功した。このSiは膜状ではなく、柱状に成長した。ガラス、金属、半導体基板用いた実験から基板の非選択性も確認され、基板の冷却効率が高いほど生成されるSiの結晶性は良くなることが分かった。 (3)凝集相における成膜メカニズムは、材料ガス分子の分解と原子状水素の引き抜き作用、Siどうしの結合がほぼ同時に起こることに特徴があり、この結果効率よく成膜できるものと考えられる。 (4)ダイヤモンド成膜を目指して炭素系の材料ガス(CH4,C2H6,CF4)を用いた成膜実験を行ったが、いずれも成膜に至らなかった。C6H12凝集相を用いた実験では、グラファイト、或いは無定形炭素の生成にとどまった。 (5)MOPAC,AMOSSによるコンピュータシミュレーションを行い、SiH4では水素を引き抜いたあとでもSP3の立体構造を保つのに対し、CH4では引き抜き後SP2の平面構造に変化することが確認できた。
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