研究概要 |
表面粗さがサブミクロンオーダの表面を的確に評価する場合に,その硬さ特性を把握することは重要である.近年,表面を評価する一つの方法として超微小荷重の押込みによって表面評価を行うナノインデンテーション法が注目されている.この測定方法は従来の硬さ測定の方法とは異なり,圧子によって形成されるくぼみを測定するのではなく,押込み荷重と押込み深さとの関係を求め,設定荷重における最大押込み深さから硬さ値を算出する方法である. 本研究では,表面を評価する場合に,「簡便に,かつ精度良く行うことのできる試験機」を念頭において原子間力顕微鏡とナノインデンターとを融合させたシステムを開発した.本システムは,硬さ測定をより迅速に,精度良く行うために非常に有効である.本研究では,主に硬質のセラミックコーティング膜の代表であるTiN(窒化チタン)膜を実験対象として,数種類の膜厚さに対して超微小押込み硬さ試験を実施した.実験は常温環境下において,微小押込み荷重によってダイヤモンド三角すい圧子を用いて,表面にくぼみを形成させ,その時の押込み荷重と押込み深さとの関係から硬さ(この場合の硬さは通常“動的硬さ"と呼ばれている)値を求め,各膜厚さにおける超微小硬さ特性を明らかにした.この結果,1)押込み荷重が5gfの場合,押込み深さは約1μmである.2)押込み荷重の減少とともに,動的硬さは上昇する.3)押込み荷重が非常に大きい場合(100gf)には,くぼみ内部にクラックが発生する.等が明らかになった.
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