フラーレンC_<60>の修飾を用いたマイクロマシン表面のトライボロジー設計

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07555054
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 大前 伸夫 大阪大学, 工学部, 助教授 (60029345)
• 研究分担者: 田川 雅人 大阪大学, 工学部, 助手 (10216806)
• キーワード: トライボロジー / マイクロマシン / フラーレンC_<60> / 表面修飾 / クラスター

研究概要

研究室現有の超高真空電界イオン顕微鏡(到達真空度10^<-10>Torr)にクヌーセンセル及び反射高速電子線回折装置を接続し、グラファイト・サブトレート等へのC_<60>のクラスター修飾とその結晶配向性を解析する装置系を設計・製作した。このような装置の改良後も超高真空電界イオン顕微鏡の真空度は反射高速電子線回折による解析が良好に行える3×10^<-10>Torrを維持していることを確かめた。クヌーセンセルを用いてグラファイト・サブストレート上にC_<60>を修飾させた。その単分子層形成からの過程を反射高速電子線回折を用いて観察した結果、過去に1〜2回例報告のあるC_<60>のRHEEDパターンと極めて類似した2次元配向性を認めた。また、当初の計画どおり、金あるいは銅の真空蒸着によってドメインを形成し、その領域内にC_<60>を修飾する手法も問題なく実施できることを確かめた。アニーリング及び基板温度の最適条件を選ぶことによって、更に良好な配向性を得られるものと考えられることから現在も実験を継続している。C_<60>を修飾した表面を超高速真空対応走査トンネル顕微鏡を用いて観察した結果、孤立するC_<60>およびそのクラスターの様子は認められたものの、原子構造まで明らかにするには至らなかった。現在までにSTMによるC_<60>の原子構造観察が成功していない原因と同様、コールドステージ、モノアトミック・チップ、基板の選択などがSTMには課題として残る。一方、本装置の主体である電界イオン顕微鏡ではそのチップ先端に修飾したC_<60>の原子構造を観察することが可能であり、特徴あるサッカーボール構造が撮影された。なお、このようなC_<60>の電界イオン顕微鏡については1995年5月2日、NHK BS-2において紹介された。

研究成果

• [文献書誌] Ohmae,N.: "Field ion microscopy of microdeformations induced by metallic contacts." Proc.Int'l Indentation Workshop,Cambridge,UK,Jan.9-12,1996,will appear in Phil.Mag.A. (in printing). (1996)
• [文献書誌] Ohmae,N.: "Recent work on microtribology of micromachines" Proc.lst Int'l Micromachine Symp.,Tokyo,Nov.1-2,1995. 47-53 (1995)
• [文献書誌] Ohmae,N.: "Structure and tribology of adsorbed water on micromachine surfaces" Proc.Int'l Tribology Conf.,Yokohama,Oct,29-N.v.2,1995. (in printing). (1996)
• [文献書誌] 大前伸夫: "エキソ電子とトライボロジー" トライボロジスト. 40. 363-368 (1995)
• [文献書誌] Ohmae,N.: "Visual observation of exo-sites with atomic resolution using field ion microscopy" Proc.11th Int'l Symp.Exoelectron Emission and Applications,Poland,Sept.11-17,1994. 245-251 (1994)
• [文献書誌] 大前伸夫: "マイクロマシンのトライボロジー" 機械の研究. 46. 104-107 (1994)
• [文献書誌] (社)日本トライボロジー学会編(大前伸夫共著): "トライボロジー辞典" 養賢堂, 338 (1995)