本年度は、デジタル画像処理技術及びレーザ誘起蛍光法(LIF)の原理を応用し、熱流動場における温度あるいは濃度等のスカラー量の三次元計測が可能なシステムの開発を行った。本計測システムは、定量的に温度あるいは濃度情報を得るためのトレーサとして蛍光染料(ロ-ダミンB)を選択し、光源にAr-Ionレーザを使用し、それを音響光学素子、光学鏡及び光学レンズ等を用いて空間的にスリット光として高速でスキャニングさせる。そして、CCDカメラにより撮影される各二次元断面内の励起光強度分布画像を、画像処理技術により温度あるいは濃度に定量化し、コンピュータグラフィックスを用いることで最終的に三次元分布を得ることができる。また、本システムの開発に伴い新たに得られた知見として、蛍光染料の励起光強度は照射レーザ光強度に強く依存することから、レーザ光強度の微小な変動が測定結果の精度に大きく影響することがが明らかになったため、励起光画像と共にレーザ光強度の変動も同時に記録し、得られる温度あるいは濃度情報に対してレーザ光強度変動を補償できるシステムの構築を行った。本計測システムの有効性を確認するために、混合層内の三次元濃度計測を行い、不確かさ解析手法により測定精度を系統的に評価した。その結果、測定精度は従来の手法に比較してやや劣るものの、流れ場の空間的に広い領域における三次元濃度に関する基礎的データを得ることができた。また、従来の測定手法では得ることのできない時系列的な三次元的濃度の輸送現象を定性的に確認することが可能となった。次年度において、本研究で開発した三次元温度あるいは濃度計測手法と、従来より開発を行ってきた画像処理技術を応用した三次元速度計測手法と組み合わせることで、熱流動場の瞬時の速度及び温度あるいは濃度を三次元的に計測することが可能になると予想される。
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