研究概要 |
凝縮や蒸発などの相変化を伴う現象を扱う場合に気液界面での分子レベルでの理解は避けて通れない問題である.特に,相変化現象の素過程においては分子が数十から数百個結合したクラスターが重要な役割を演ずると考えられる.本研究では,これらの原子・分子クラスターの性質に関しての実験的取り扱いを試みるために,原理的に大きなサイズのクラスターまで高い分解能で測定が可能であるイオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析装置を試作している.イオンサイクロトロン質量測定装置は,超伝導磁石による強力かつ安定な磁場中にクラスターイオンを閉じこめることによって,磁場との共鳴によるイオンのサイクロトロン運動の周波数がクラスターイオンの質量に反比例することから質量を測定する装置である.本年度は,超高真空中で動作するイオンサイクロトロンセルの設計・製作をほぼ完成し,超伝導磁石の準備もほぼ完成している.また,イオンサイクロトロン励起の実現のためにパソコン上の逆フーリエ変換によって,任意の質量範囲に対応する周波数成分を持つ電圧変動波形を計算しこれを増幅して超高真空中に導入する必要がある.このための制御回路とソフトウエアの開発もおおよそめどがついた.さらに,イオンサイクロトロン信号の検出には高速・高増幅のプリアンプとデジタルオシロスコープによるA/D変換・パソコンでのフーリエ変換処理の手順とすることとし,ソフトウエアがほぼ完成している.今後,実際に固体材料をQスイッチYAGレーザーで蒸発・イオン化させることによってセル内にクラスターイオンを作り,実際の質量分析を試みる予定である.
|