研究概要 |
本研究は,サーボコントローラの誤動作を避けるために用いられているノイズ低減用ロ-パスフイルタを取り除き,従来からこのフイルタの遮断周波数で制限されていたコントローラの動作速度の向上を図る開発研究である. 本研究のコントローラは,耐ノイズ特性の向上のために,江村の提案になる2相型PLLが用いているが,従来の2相型PLLは,アナログ回路主体のため,調整箇所が多い上に,経年変化により定期的に再調整せねばならず,また,高精度のアナログ演算素子を多用するので,製造コストが高く,汎用コントローラへの応用が妨げられていた.そこで,2相型PLLの耐ノイズ性の高さや高速高分解能などの優れた特徴を生かしたまま,回路の一部をマイクロプロセッサやDSPによる演算回路に置き換え,回路定数の変化を抑えるとともに調整箇所を減らし,製造コストが低く耐ノイズ性に優れた汎用サーボコントローラを開発することとした.具体的には,高精度エンコーダから得られる2相正弦波を2相型PLLにより高分解能で内挿し,この内挿パルスを可逆カウンタで計数してエンコーダの回転角を得ているが,内挿に2相型PLLを用いているので,強力なノイズ環境下においても正確な位置が検出できる. 平成8年度においては,はじめに,汎用の高速マイクロプロセッサで制御可能なように平成7年度に設計・試作を行ったコントローラの特性を測定した.測定の結果,2相型PLLについては初期の予想通り,内挿精度が高く,また極めて優れた耐ノイズ特性を有していることか確認された.しかし,汎用プロセッサではサンプリング間隔を十分に短くできなかったので,エリアシングの影響によりトラッキング誤差のFFTが特定の周波数でピークを生じることが分かった.そこで,DSPによりサンプリング間隔を短縮することを試みた.DSPを用いた回路は,最近ようやく動き始めたばかりであり,本格的な実験はこれからであるが,簡単な実験により,サンプリング間隔の短縮に対してDSPが極めて有効であることが確認された.なお,制御システムの特性の測定には,サーボアナライザが大変有効であった.
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