研究概要 |
筆者の考案によるプッシュプルパラメトリック変圧器は,負荷が線形あるいは非線形に拘らず入力電流は正弦波であり,入力力率も極めて高い。したがってこのようなパラメトリック変圧器を用いれば,歪み負荷電流の補償機能並びに負荷の力率改善機能を有し,更にパラメトリック変圧器が具備する線間電圧調整,過負荷保護,双方向性ノイズフィルタの機能を具備する電源装置の実現が期待される。本研究はこのような考えに基づき,プッシュプルパラメトリック変圧器を用い,双方向性の電気的ノイズと高調波の除去機能を具備し,停電などの不測の事故にも対処し得る,コンピュータ用電源装置の開発を目的として,2カ年の予定で行うものである。 平成7年度においては,主としてプッシュプルパラメトリック変圧器の特性試験を行い,電源としての特徴,ならびに無停電電源の開発に必要な基礎的事項を明らかにした。得られた知見を以下にまとめる。 (1)装置の製作:直交磁心を用いてプッシュプルパラメトリック変圧器の製作を行った。容量は種々の特性試験の便宜上,400VA程度とした。試作器の入出力電圧特性および負荷特性について実験ならびに検討を行い,プッシュプルパラメトリック変圧器の有する基本的な動作特性を明らかにした。 (2)ノイズフィルタ試験:プッシュプルパラメトリック変圧器の入力電圧にスパイクやディップなどの電気的ノイズを重畳して,出力側への影響を検討した。次いで出力側でも同様な試験を行い,本変圧器が双方向性のノイズフィルタ機能を具備することを実証した。 (3)高調波フィルタ試験:低次の高調波電圧,電流に対する特性についても検討を行った。特に,負荷としてダイオードやサイリスタ整流回路を適用した場合の特性について詳細な検討を行った。これらの試験結果から,プッシュプルパラメトリック変圧器が高調波電流に対する一種のフィルタ機能を具備することを明らかにした。 (4)最適設計手法に関する考察:装置の設計にあたっては,直交磁心の非線形磁気特性と磁心内磁束の立体的分布を考慮する必要があり,これまでの電気機器の設計手法がそのまま適用できない。本研究では,非線形な3次元磁気回路に基づく解析設計手法(Reluctance Network Analysis)を提案し,極めて良好な結果を得ている。これは新しい知見である。 以上より,プッシュプパラメトリック変圧器の基本的な動作機構をある程度解明するとともに,高性能化と最適設計手法の確立に資する指針が得られ,平成7年度の研究目標はある程度達成されたものと考えられる。
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