研究概要 |
本研究は、筆者の着想によるプッシュプル方式のパラメトリック変圧器を用い、信頼性と機能性の高い無停電電源装置の開発を目的として、動作機構の解明と解析設計手法の確立、及び試作器による検証を行ったものである。以下に本研究の成果を記述する。 1.プッシュプルパラメトリック変圧器の試作:特性検証用として、400W程度の小形のプッシュプルパラメトリック変圧器を試作し、その動作特性について実験的検討を行った。特に、トライアックや全波整流回路などの非線形負荷時の動作について詳細に検討を行い、本変圧器が歪み負荷電流に対する一種の電流フィルタ機能を具備することを明らかにした。 2.動作機構の解明:上記の特性を解明することを目的として、直交磁心の簡単な解析モデルを考案し、抵抗負荷ならびに非線形負荷時の動作機構について検討を行った。その結果、プッシュプル方式では、直交磁心の巻線と直列ダイオードで形成される閉回路内を高調波が循環すること、また、共振用コンデンサがエネルギー蓄積作用を有することのため、上記の機能が実現されることが明らかになった。 3.最適設計法の確立:直交磁心の3次元磁気回路モデルを構築し、磁化特性と鉄損特性の算定を行った。また、直交磁心のSPICEモデルを構築し、定常ならびに過渡解析のための回路シミュレーション手法を与えた。さらに、3次元磁気回路と外部電気回路を結合させることによる、磁場-回路の連成解析手法を提案した。これらの計算値は実測値と極めて良好な一致を示し、最適設計に対して有用な手法であることが明らかになった。 4.無停電電源への応用:以上の成果に基づき、プッシュプルパラメトリック変圧器を用いた無停電電源の動作について検討を行ったところ、本方式で無瞬断の無停電電源が実現可能なことが明らかになった。さらに新しい応用として高速無効電力補償装置を提案し、実証試験によりその有用性を明らかにした。 以上,本研究の結果,プッシュプルパラメトリック変圧器を用いた無停電電源の実用化の見通しが得られるとともに,直交磁心の新しい応用分野が開拓され,所期の目的はある程度達成されたものと考えられる。これらの成果は電気学会研究会,日本応用磁気学会学術講演会及び電気学会論文誌等で発表を行った。
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