研究概要 |
本研究は,当該研究者のこれまでのMOCVD法によるp型伝導度制御ならびに青色半導体レーザ動作の研究を基礎とし,青色半導体レーザの実用化におけるMOCVD法の可能性を実証することをめざす.p型伝導度制御に関しては,通常のMOCVD法で用いる有機金属をそのまま用いたMOMBE法において,窒素プラズマを用いてp型ZnSeが成長できることが明らかになった.またこの結果から,通常のMOCVD法において問題となる水素によるアクセプターの不活性化は,キャリアガスである水素が関与している可能性が高まった.なおその検討を進めている.一方バンド不連続の大きなヘテロ構造としてMgS/ZnSe構造を検討し,世界で初めて閃亜鉛鉱構造のMgSならびにその超格子の作製に成功した.特にMgSの格子定数の正確な値はこれまで知られていなかったが,高精度X線回折測定によりその値を決定した.現在こうしたヘテロ構造のバンド不連続の測定,ヘテロ界面の急峻性の改善,ヘテロ構造へのド-ピングなどの検討を進めている.GaAs表面とSの相互作用によって,特にMOMBEの高真空系ではGaAs表面に〔-110〕方向に並んだピットが発生することを明らかにしたが,常圧水素中のMOCVDにおいては顕著なピット発生は観測されなかった.これはキャリアガスの水素の存在によって表面反応が変化するためと思われる.これによってMOCVDにより,ヘテロ界面からの欠陥生成を防いだダイオード製作の可能性も出てきた.
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