電磁型モータの出力は磁性体の体積に比例する。従来のモータを薄膜化技術により数mmにマイクロ化した場合のトルクは10μN-m程度であり、マイクロモタ-の出力の向上を図るためには新規な駆動方式の採用がが必要である。本研究では低速で高出力のアクチュエータの開発を意図して、ナノサイズの磁気繊毛を開発し、薄膜磁石と組み合わせて繊毛運動による接触駆動型のモータの開発を試みた。 (1)高アスペクト比磁気繊毛の開発:磁気繊毛は従来交流電着法により作製されており、アスペクト比が30以下に制限されていた.我々はバリア層と呼ばれているアルミナ中に微細孔を貫通させることにより、直流電析法の適用を可能にした.この事により、直径0.1μmアスペクト比2000の磁気繊毛が作成可能となった.磁気繊毛の反磁界係数はアスペクト比が20を越えると0.1程度に収束するが、繊毛間のスペースを広げることで数100Oeの印加磁界で飽和する磁気繊毛を開発した。 (2)高エネルギー積Nd-Fe-B異方性薄膜磁石の開発:高エネルギ積異方性薄膜磁石に関しては、Dyを添加して高保磁力を得た後、Feソフト層と組み合わせて積層構造の薄膜磁石を作製した。積層構造で結晶粒の成長を断つことにより、高保磁力の厚膜磁石が得られる。 (3)高出力アクチュエータ:高アスペクト比のアモルファス磁気繊毛は十分にフレキシブルであるので、接触型のアクチュエータへの展開が可能である.高アスペクト比のソフトな磁気繊毛の繊毛運動による接触型のアクチュエータへの応用を試みた。直径0.1μm長さ200μmの磁気繊毛が0.3μmの間隙でX-Yの2次元に配列した平板に薄膜磁石によりX方向にバイアス磁界を印加し、Z方向に交流磁界を重畳することで制御可能なX方向の振動運動が確認された。Y方向の磁界印加で先端に楕円運動を付加することが可能である。試作機を作製するまでには至らなかったが、細径パイプ中に磁気繊毛を設けて高出力マイクロモータへの展開が期待される。
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