研究概要 |
立方晶窒化ボロン(cubic Boron Nitride : cBN)はダイヤモンドにつぐ熱伝導度および高硬度を有し,耐熱性や化学的安定性にも優れ,広いバンドギャップをもつIII-V族化合物半導体である.このような優れた特性を有し,広い応用が期待されるcBN薄膜に関する研究が最近活発に行われている.その方法としてイオンプレーティング法など各種の方法が報告されているが,成膜の再現性,結晶性や密着性等の問題があり,解決すべき課題を多く残している. 本研究では,パルスレーザアブレーション法としてパルス発振させたNd : YAGレーザ(波長:532nm[第二高調波])およびKrFエキシマレーザ(波長:248nm)を用いてBN薄膜を650℃に加熱したSi(100)基板上に作製した.さらに,作製薄膜特性をフーリエ変換型赤外吸収スペクトル分析装置(FT-IR),オージェ電子分光分析装置(AES)等により調べた.また,マルチチャンネル分光分析装置でプラズマの発光分光分析を行いプラズマ温度や発光種を明らかにすることにより,レーザアブレーション法によるプラズマ特性と膜質の相関を定量的に検討した.ターゲットには六方晶窒化ボロンを用い,パルスレーザの繰り返し率は10Hzであり,レーザエネルギー密度は3.8J/cm^2であった.チャンバ内は,反応性の窒素ガスにアルゴンガスを加え,0.13〜20Paの範囲の全圧力で実験を行った.AES分析によりBN薄膜の組成は窒素ガスとアルゴンガスの混合比に依存することがわかった.532nmのYAGレーザを用いて作製したBN薄膜の表面には大きな粒子が堆積してきめの荒い表面であったが,248nmのエキシマレーザにより作製した薄膜は小さい粒子がややまばらに堆積し平坦な表面であった.FT-IR分析により基板電極に約200VのRF負バイアス電圧を印加すればcBN相の形成が促進されることが明かとなった. さらに,現有のパルスYAGレーザアブレーション装置の改良として,結晶化促進および組成制御用イオン源を購入し,窒素およびアルゴンイオン源を設置した.
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