cBN薄膜作製法としてパルスレーザデポジション装置にRFバイアスを付加した新方式を提案し、Si(100)基板上にBN薄膜の作製を行った。ターゲットに六方晶窒化ボロンおよび立方晶窒化ボロンを用い、パルスレーザの繰り返し率を10Hzとし、各種パルスレーザアブレーション条件を変化し実験を行い、堆積した薄膜特性を分析した。さらに、BNプラズマプルームからの発光スペクトルを分光分析し、発光種を同定し、BN薄膜特性とプラズマ特性の関係について検討した。 BN薄膜の組成は窒素ガス圧力に依存し、窒素ガス圧力が10.0Pa、レーザエネルギー密度が3.8J/cm^2、基板温度が650℃において化学両論比に近いものが得られた。窒素ガスにアルゴンガスを混合し、基板にRFバイアスを加えることによりcBN相が形成され、RFバイアス電力が高いほど、またアルゴンガスの割合が高いほどcBN相の形成が進んだ。これは基板表面上でのアルゴンイオンボンバードメントによる局所的高温・高圧の発生や蒸発粒子の活性化などにより結晶化が促進されるためと考えられる。ボロンイオン(B^+)のスペクトル線(345.1nm)強度がN/B組成比に大きく影響することが分かった。堆積薄膜表面状態はレーザ波長に大きく依存し、波長が短いKrFエキシマレーザを用いて作製した薄膜の表面には径の小さい粒子がまばらに堆積し平坦な膜であった。またcBN薄膜の基板材料として用いられているWC薄膜作製についても検討し、メタンガス中で基板温度500〜750℃において結晶性のWC薄膜の作製に成功した。さらに、ダイヤモンドやcBNに匹敵する高硬度材料として注目されているCN薄膜作製等についても一部検討し、CN薄膜作製に直流バイアス電圧が有効であることを明らかにした。
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