研究課題/領域番号 |
07555108
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊 裕之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90013226)
|
研究分担者 |
野田 武司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (90251462)
高橋 琢二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (20222086)
|
キーワード | ヘテロカップリング / 速度変調 / 二重量子井戸 / 共鳴結合 / 自己形成InAs量子箱 / GaAs(111)B面 / 多段原子ステップ / サイクロトロン共鳴 |
研究概要 |
電子状態の異なる2種類のヘテロな量子構造を隣接させて、その結合度を電気的または光学的に制御すると、その物性を顕著に変化させられるためデバイス応用の可能性がある。本研究では、下記に述べる現象を調べ、その特色を明らかにした。(1)二重の量子井戸を伝導チャネルとするFETにおいて、一方の量子井戸(QW-A)を高純度に保ったまま、他方の井戸(QW-B)にドナー不純物を導入した構造を設計・試作した。この素子では、通常はチャネルA内に局在した電子が高い移動度を示し伝導を支配するが、ゲート電圧を調整して双方の井戸を共鳴結合させると、全ての電子が不純物の影響を受けて、移動度が大幅に低下するため、負の相互コンダクタンス特性の得られることを見出した。(2)GaAs/n-AlGaAsの界面を伝導チャネルとする逆HEMT構造において、チャネルとゲートの間に自己形成InAs量子箱を設けたFET構造を設計・試作した。この素子では、ゲート電界の作用で、チャネルの電子を量子箱に流入させて捕縛できるため、メモリー素子として動作することを見出した。(3)周期約20nmの多段原子ステップをGaAs(111)面上に形成し、その上にn-AlGaAsを成長することでFETを作り、界面ステップによる電子散乱の制御可能性を調べた。ステップに平行な方向の移動度は低温で30万cm^2/Vsにも達するが、これと垂直な方向のそれは電子密度の高い時、3万cm^2/Vs以下になることを見出した。また、この系に強い磁場を加えると、特異な伝導特性やサイクロトロン共鳴線の拡がりの生じることを見出した。(4)厚さの異なる二重の量子井戸(QW-AとB)において、電界を加えた状態で光励起をすると、発生した電子はQW-Aの基底準位E_A(1)に、正孔はQW-Bの正孔の基底準位H_B(1)に収容される。この時、両者の励起準位E_A(2)とE_B(2)を共鳴させ、E_A(1)の電子をE_A(2)に光学的に励起すると、電子は双方の井戸の間を往復するため、その一部が井戸Bに転送されて、バンド間発光の生じることを見出した。同様に、強磁場下に置いた量子井戸では、遠赤外光の照射によりランダウ準位間の遷移が生じるが、これに伴って光起電力信号の生じることも見出した。
|