複数の搬送波光周波数を用いる光通信技術を、光FDM(Frequency Division Multiplexing)と呼ぶが、この技術を用いた光通信システムの研究が、最近のデバイス技術の進歩により、現在ようやく活発化しつつある。しかし半導体レーザの発振周波数は、温度や駆動電流により大きく変化する。FDM光ネットワークでは光周波数のやり取りを行うので、ネットワークにおける周波数同期を確立することが重要な問題となる。このためには何らかの手段を用いて、半導体レーザの周波数を絶対安定化する必要がある。 本年度は、連続波長可変光源に関して研究を行い、2種類のレーザのプロトタイプを試作した。第一に、モードホップのない連続波長可変性が実現できる新しい構造のリング共振器型半導体レーザを提案し、その試作を行った。狭い波長範囲ではあるが、連続波長可変性が実現された。また、最小のスペクトル線幅は35kHzで、周波数安定度は1GHz/Hourという高性能が達成された。現在このレーザをアセチレンの吸収線に絶対周波数安定化することを試みている。 第二に、ファラデー反射器を用いた新しい単一縦モード光ファイバレーザを提案し、その試作を行った。まだモードホップを完全に抑圧するには至っていないが、スペクトル線幅2.5kHz以下の単一モード発振が達成された。 次に、半導体光増幅器の四光波混合を利用して、周波数間隔のそろった周波数規準を作り、これに波長可変レーザの周波数をロックするシステムについて検討を開始した。本年度はまず、半導体光増幅器の四光波混合効率の改善に取り組み、周波数間隔200GHz、入射パワー-10dBmで四光波混合効率100%が達成された。
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