染色体数の異常を、FISH法を適用して、細胞核内の発光数を計数することで診断できる。我々が開発中の支援システムにおいて、核内光点の計数は、これまでは自動化の程度が低かった。本研究では、単なる支援に止まらず、積極的に自動化することで検査士への負担を軽減し、多数の観察結果を容易に取得可能とすることを目的とする。計算機で処理された画像は「設備備品」の項にあるビデオテープレコーダに録画され、後に計算機制御により必要なデータをカラープリンタに出力してシステムの向上に役立てられた。本研究により次の成果を得た。 (1)低倍(x20)の対物レンズの使用により、肉眼による観察条件に比べて、一度に計測できる面積が約4倍に拡大した。これによって、水平方向にステージ移動させる回数が減少するため、ステージ移動に要する時間が減少した。また、この変更により画像の明るさが増し、露光時間も短縮された。 (2)光軸方向の標本化間隔を最適化したため、ピント合わせ処理で必要なステージ移動回数が減少し、処理時間が短縮された。 (3)ピント評価法の検討によって、より高速で安定した合焦点検出が可能となった。 (4)細胞核を染色する蛍光色素の発光特性の標本ごとの違いを、計測画像をもとに補正することで、単純にFITCの緑成分のみの2値化による検出に比べて、正確な検出が可能となった。 (4)露光時間を計算機から制御できないCCDカメラであっても、ソフトウェアで露光完了を検出することができた。このため、CCDカメラの露光時間を計算機が自動的に算出でき、無駄な待ち時間を減少させて処理時間の短縮が可能となった。 これらの結果から実用的な処理時間と精度を持つシステムの製作が可能な事を示すことが出来た。今後実際の標本を数多く処理することでシステムの信頼性を確認したい。 研究成果は、裏面の「研究発表」に記したもの以外、次の文献にも記載されている。 平成7年度岩手大学研究科修士論文 依田 拓「蛍光インサイツハイブリダイゼーション法に基づく細胞異常判定の自動化」ppl-33(平成8年3月)。
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