研究概要 |
本研究はEPMAによる面分析結果のカラーマッピング処理の手法を適用して、コンクリート中に生成している化合物を判定するための簡易状態分析法の開発を目的として実施したものである。 平成7年度には、塩化物及び硫黄化合物を種々のレベルで含んでいるモルタル供試体についてEPMAによる面分析を行い、そのカラーマッピング像の重ね合わせを行って分析領域のサイズ、加速電圧、試料電流などに関する最適分析条件を把握した。次に、このような条件下で目的元素であるClまたはS及びこれらと化合物を形成することが判明しているCaとAlについて面分析を行った。それぞれのカラーマッピング像をRed,Blue及びGreenの原色で示してCRT上で重ね合わせ、それぞれの組み合わせによって黄色または白色に表示された部分の画像処理を行って各化合物間の相対比率を求めた。即ち、塩素の場合では、セメント硬化体中に存在している全塩素においてFriedel氏塩及び塩化カルシウムとして結合している比率を求め、硫黄の場合では同じくセメント硬化体中に存在している全硫黄において、エトリンジャイト及び石膏として結合している比率を求めた。これらの結果はいずれも他の手法を通じて得られた従来の知見をほぼ裏付けるものであった。塩素を例にとると、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリート中の全塩素のうちセメント重量の約0.4%まではFriedlel氏塩として固定されるという既往の知見が以上の簡易状態分析を通じて立証された。
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