研究概要 |
常時微動の水平/上下スペクトル比から地盤の増幅特性を推定する手法をさらに改良した.地盤振動を構成するレイリー波の比率(レイリー波率)は,地盤増幅率を推定する際重要なパラメターとなるが,本研究では,このレイリー波率を求めるために水平成分と上下成分のコヒーレンスを利用した.地盤構造が得られている地点においてこの手法の適用性を検討したところ,インピーダンス比が小さい場合地盤増幅率を小さめに見積もる傾向があるものの,相関係数は0.72となり旧手法の0.66と比較して推定精度が向上したことを確認した.この手法を鎌倉市に適用し,1923年関東地震における被害と常時微動から求められた推定増幅率を比較し,両者が比較的対応していることを確認した. 増幅率推定法の改良と平行して,今年度は横浜市において常時微動測定を行い,強震記録と比較を行った.測定点は,横浜市高密度強震観測点18地点と防災科学技術研究所の強震観測点2点の合計20地点である.20地点の中で最も地震動強さが小さく,堅固な地盤上に位置している泉区の観測点を基準点とし,この地点に対する各強震観測点の地震記録のスペクトル比を求め,常時微動の水平/上下スペクトル比と比較した.両スペクトル比は,卓越周期についてはよい一致が見られること,増幅率については弱いながらも相関があること,を確認した. また,本補助金によって購入した強震計3台を鎌倉市に設置し,これまでに1996年9月11日の茨城県沖の地震(M=6.6)等,30以上の地震を記録している.今後は鎌倉市,横浜市で得た強震記録・地盤情報・常時微動記録を基にして地盤特性データベースの構築及びそれを利用するシステムを作成していく予定である.
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