研究概要 |
急峻な山岳地において頻繁に生起するレーダー等でもモニタリングできない局地的集中豪雨について生起条件を抽出し豪雨生起後の降雨の時・空間分布特性を導くことによって、都市の豪雨水害に対して実時間での降雨予測手法を防災システムの一つとして開発する事を目指し,3年計画の研究の2年度として前年度の成果である積雲モデルと観測方法を用いて以下のことを行った. 1)梅雨前線が南下して北陸地方を中心として豪雨災害をもたらした1996年6月24日〜26日において福井県九頭竜川流域で豪雨の観測をおこなった.観測項目としては約2時間毎の大気プロファイル,連続的な地上降雨,およびXバンドレーダーによる雨域の移動の定性的観測である. 2)上述した観測データを初期値・検証値として,積雲モデルを用いて豪雨をもたらすような積雲の発達・衰弱をつかさどる微物理過程に与える地形,風速,大気安定度,水蒸気の鉛直分布の影響に関して考察した. 3)豪雨のレーダーによる降雨強度の算出精度向上を目的として,MUレーダーによる大気中の降水粒子の観測と,地上雨滴粒径分布の観測から豪雨生起時の雨滴粒径分布の鉛直プロファイルを定式化した. 4)レーダー雨量計とGPVデータを用いた3時間から6時間程度の近畿地方の降雨を予測するような短時間降雨予測手法を開発した.これは従来型のレーダー雨量計のみによる予測の際に,レーダー観測域外からの降雨が予測誤差の原因となることを回避するためのものであり,それによって降雨予測精度は向上した. 5)1次元積雲モデルを用いて,都市域での10分間に降る可能最大降水量(PMP)を算出することを試み,それが80mmであることを見積もった.これは従来の手法で求められているPMPに比べて半分程度の値である.
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