研究概要 |
本年度は、不純物除去に有効な元素の探索およびJIS規格の特性を満足させるための各不純物の許容濃度を求めることを目的として、実用アルミニウム合金の機械的性質、成形性および耐食性に及ぼす不純物の影響について、ミクロ組織因子の観点から考察した。(1)3d遷移金属V、Mn等を添加することにより、10μm以上の巨大な金属間化合物が晶出するようになる。これらの化合物はAl_6Mnあるいはα-Al(Mn,Fe)Si系化合物で、MnあるいはFe中に他の不純物が置換固溶する。これらの化合物の比重は溶融アルミニウムより大きいため、るつぼ底部へ沈殿する。(2)Al-Mn系合金はBi、Ca量が増えるにつれて強度は向上するが、伸び、吸収エネルギーおよび成形性は低下する。特にCa量を増加させると、CaAl_2Si_2の粗大な化合物が増え、吸収エネルギーが著しく低下し、耐食性も劣化する。同様にTi量の増加に伴って粗大なMn_<12>Si_7Al_5化合物が晶出するようになるが、機械的性質、成形性および耐食性とも、Ti量が0〜0.09%の範囲内では大きな変化は認められない。(3)Al-Mg系合金ではPb量が0〜0.07%の範囲内であれば諸性質への影響はほとんど認められない。Si量が0.9%まで増えると、Mg_2Si化合物が増え、アルミニウム固溶体中のマグネシウム量が減少するため、引張強さおよび吸収エネルギーは大きく低下するが、成形性および耐食性に大きな変化は認められない。(4)Al-Mg-Si系ではFe,MnあるいはVの増大により粗大な化合物が増えるとともに、その中に主要添加元素であるSiが固溶し、析出物が少なくなるため、諸性質とも劣化する。そのため、Si除去のために添加するVの残存量は0.2mass%以下にする必要がある。Caの添加により晶出するCaAl_2Si_2化合物は多量にSiを含むため、時効硬化量が少なくなり、0.76%Caを添加した合金では、時効硬化しなくなる。そのため、強度および吸収エネルギーは低下する。一方、マトリックスは軟化し、化合物は細かく分散するため、伸びは逆に向上する。耐力のJIS規格値を満足させるためには、Ca残存量は0.1mass%以下にする必要がある。
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