研究課題
本年度の研究計画・方法に従って研究を遂行し、得られた結果を下記に示す。1.非晶質とナノfcc-Alの複相を示す本開発アルミニウム合金は、商品のアルミニウム合金としては最高強度を示す超々ジュラルミン(7075-T6)の約2.5倍の強度を持っている。この強化は、1)ナノfcc-Al粒子は完全結晶を有している。2)非晶質/fcc-Al界面は過剰空孔を含まない高稠密界面構造を持ち、クラック発生を抑えると共に応力伝播に好都合な状態にある。および、3)ナノfcc-Al粒子は3〜5nmのナノ粒径であるために、約10〜20nmの厚さの原子集団で生じると考えられる非晶質合金の不均質変形を効果的に抑える。このような3つの相乗効果に原因していることを、高分解能電子顕微鏡および走査トンネル顕微鏡などで明らかにした。2.ガス噴霧法により作製した非晶質アルミニウム合金粉末を押出し成形することにより、約100〜200nm径のfcc-Al母相中に約50nm径の金属間化合物が均質に分散したナノ結晶バルク材の作製に成功した。このバルク材の引張強度、ヤング率、引張伸びおよび回転曲げ疲労強度はそれぞれ800〜1000MPa、90〜105GPa、1〜10%、300〜360MPaであり、全ての特性で商用のアルミニウム合金よりも極めて優れていること見出した。3.本研究の知見に基づき、新奇なナノ準結晶とfcc-Alの複相をもち、1000MPaを越えるアルミニウム合金の開発に成功した。この合金に関しては次年度も引き続き研究を遂行する予定である。
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