研究概要 |
本研究は,スタンパを通電加熱により樹脂の流入時の短時間だけ急加熱することによって転写性を向上させる技術を開発するものである。平成7年度の研究ではまず単純な帯板状キャビティ内への射出を取り上げた.ここでスタンパのモデルとして,セラミックスのブロックの表面にニッケルメッキを施し,このメッキ層を通電加熱する. 得られた結果を要約すれば次の通りである. (1)スタンパモデルについてはまず無電解メッキ法によって厚さ(10μm)のメッキ層を得たが,さらに焼鈍することによって密度を向上させ材質を改善するとができた. (2)大気中で通電し加熱冷却特性を調べた結果,10Vの電圧を3秒間印加することにより80℃の昇温が得られ,2秒の放冷により50℃の温度低下を得ることができた.温度変化の速度はメッキ層厚さや電圧により変わるが,ここで達成された速度は通常の金型の加熱,冷却速度に比較して格段に速く,この方法が射出成形特性の制御に有効であることを示している.またスタンパ面の温度分布の赤外線カメラによる測定結果より,面内の温度むらは小さく実用的に問題はないことを確認した. (3)このスタンパを用いて射出成形を行った結果,通電加熱の効果は転写性及び射出圧力に極めて大きいことがわかった。ただし今回のモデルスタンバの表面形状はベースのセラミックブロックの粒子粗さがそのままメッキ層表面に現れたものである.従って続く平成8年度の研究では,光ディスクのピットに対応する微細形状を持つスタンパモデルを製作した上で更に詳細な検討を行うことが必要である.また数値解析を行い,これらの現象を力学的に解明したい.
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