研究概要 |
本研究では、各種廃触媒、電池、コンデンサ、金属系超電導材など代表的なレアメタル含有スクラップに対してその最適抽出条件を提示することを目的として試験研究を行った。まず、申請者らが新たに見出した硝酸鉄系新溶媒の高速溶解特性をレアメタル回収プロセスとして完成させるために、より高速溶解のための高温高圧条件や共存元素の影響やガス発生の抑制条件などの探索に取り組んだ。NOxなどの抑制機構の解明は反応効率の確保と環境保全の両面から重要である。対象レアメタルとしてはニッケル、コバルトに加え、鉄鋼スクラップをリサイクルする上で阻害元素となる錫や亜鉛、銅についても調査した。最終的に鉄硝酸錯体水溶液をNi-Cd電池のリーチングに応用し、目的金属の選択的溶解というスクラップ処理技術の面から望ましい結果を見いだした。結果の概要を以下に示す。 (1)最適抽出条件の探索 NOXの生成を抑制し、硝酸消費量を抑えつつ反応効率を最大にする反応条件を操業条件の則して検討した。鉄硝酸錯体を含む溶液では、Niの溶解は温度依存性が非常に大きく、化学反応支配の挙動を示すが、速度を支配する化学反応は硝酸濃度によって変化することを明らかにした。 (2)二次資源処理への応用 基礎研究の知見を元に、より広範な廃電池・廃触媒等各種のニッケル含有スクラップや廃棄物を対象にした実用化実験を試みた。特に実証試験においてNi-Cd蓄電池に応用し、スチール製の筐体表面を不動態化して残したまま、ニッケルとカドミウムを選択的に溶解できた。鉄イオン濃度0.2mol/l、硝酸濃度9mol、温度105℃、試料回転速度3000rpmでNiの溶解が最も速くなり、58.2×10-3(kg/m2^*s)となった。これはSn,Zn溶解速度の約10,000倍、Cu溶解速度の6倍におよび、非常に速いNiの溶解を実現した。
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