研究概要 |
MoをSi飽和Al融体に浸けると,Mo表面にMo(Si,Al)_2が生成する.このような合成法はディップ法と呼ばれ,低温で金属間化合物を被覆する方法として期待されている.上記のMo(Si,Al)_2のディップ法における反応成長機構を組織観察とGaによるトレーサー実験により検討した.ディップ法によるMo(Si,Al)_2は成長方向に平行な針状組織で,その径は約0.2μmであった.また,X線回折からディップしたMo(Si,Al)_2は成長方向に対し(301)面が配向していることがわかった.また,XRDによる格子定数の測定およびEPMAによる組成分析からディップ法によるMo(Si,Al)_2はAl-Si融体を含んでいる可能性が高いことがわかった. あらかじめディップにより作成したMo(Si,Al)_2をGaを含むAl-Si融体にディップした結果,融体側からGa濃度が減少する濃度勾配が観察され,その濃度分布にはかなりムラがあることがわかった.このGaは固溶したものではなく,Mo(Si,Al)_2皮膜中にある融体のGaが検出されたものと考えられる.Ga濃度のムラは皮膜中のクラックなど,融体の多い部分を測定したものと考えられる. 以上の結果から,皮膜中の微細な細孔を融体が移動し,反応界面であるMo/Mo(Si,Al)_2界面にAlおよびSiを供給している可能性が高いことがわかった. さらに,Mo(Si,Al)_2の低温焼成法として,Mo,Si,Alを出発原料に液相反応焼結を試みた.800℃の焼結では,Mo(Si,Al)_2とMo_5Si_3が得られるが,十分な強度を有するには至らなかった.1000℃の実験ではMo(Si,Al)_2とMo_5Si_3が得られた.800℃に比較すると,固化が進んでいるものの表面にクラックが観察された.また,いずれの焼結でもポーラスな組織であることがわかった.
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