研究概要 |
半導体製造工程では,基板の洗浄にオゾン層破壊の原因物質であるトリクロロエチレンや四塩化炭素,フロンなどの揮発性有機物質を用いており,その処理が問題となっている。本研究では,数ppmの四塩化炭素(CTC)をイオン核生成により微粒子化して除去する揮発性有機物質(VOC)分離・回収システムの開発を目指し,(1)電子付着装置(VOC蒸気イオン化装置,(2)イオン核凝縮装置,(3)静電捕集装置を試作し,その性能評価を行うとともに,これらを組み合わせたシステムの総合評価を行うことを目的とした。本研究で得られた主な成果は以下のように要約できる。(1)音速ジェットコロナ放電型電子付着装置を試作し,高密度の電子を発生できる条件を明らかした。また,この電子付着装置により,高効率で低濃度VOC蒸気をイオン化できることがわかった,(2)水蒸気によって(1)で生成したイオンを成長させるイオン核凝縮装置(微粒子化装置)を試作し,イオンがサブミクロン粒子にまで成長する条件(イオン流量,温度,水蒸気濃度,凝集管温度など)を明らかにした,(3)高電圧を印加した二重円筒型コンデンサーである静電捕集装置を試作し,(2)で凝集成長させた粒子の捕集効率を測定した結果,数kVの電圧で100%粒子を除去できることがわかった。以上の試作装置を組み合わせた本システムは,四塩化炭素単成分蒸気を含む空気の処理に有効であることが確認されたが,今後,四塩化炭素よりもイオン化ポテンシャルの小さな成分が含まれる場合について,どの程度四塩化炭素がイオン化されるか検討する必要がある。
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