研究概要 |
管型逆浸透膜の中心軸上に丸棒を挿入し狭い環状の海水流路を形成した実験装置を,海面下500〜600mに懸垂した際に,海水流路内に発生する自然対流による海水流路内の海水挙動を,日本近海の海水物性を用いて,データ解析装置(今年度購入)で解析するとともに,逆浸透膜面を透過する淡水透過量を予測くした.その結果,淡水透過量が海水流路の長さおよび間隙に影響されることが予測された. 水産大学校の練習船"耕洋丸"の洋上訓練航海に便乗して,東シナ海洋上,北緯31゚56',東経129゚05'(五島沖深さ900m)において,管型逆浸透膜を設置した海水淡水化の実験装置を海面下500〜600mに懸垂し,淡水取得実験を行った.その際,管型逆浸透膜に管外(淡水容器側)からの静圧がかかり膜が破損しないように,実験装置の淡水容器内を真空ポンプ(今年度購入)で事前に減圧した.また,その点の海象(海水の深さ方向温度分布,濃度分布)を同時に計測した. 実験結果は,深海の静圧頭を利用することにより,電力無しで海水から淡水を得ることができることを初めて実証した.また,取得淡水量の実験値は解析値で予測される量と妥当な一致を示した. しかし,取得した淡水濃度の実験値は予測値より高い値を示した.これは,海面下600mに懸垂される際に,実験装置が60気圧という大きい圧力差に曝されて居るため,微少量ではあるが高濃度(3.5%)の海水が漏洩したためと推察される.今後,装置の機密性を改善し,再度洋上で海水淡水化実験を行うことが必要である.
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