研究概要 |
酵素を有機溶媒中で用いることができれば、疎水性の基質が使用でき,さらに加水分解酵素をエステル合成やペプチド合成の触媒として利用することが可能となる。本研究では、いかなる酵素に対しても応用できるような界面活性剤-酵素複合体の調製法を開発し,本酵素複合材料を利用した工学分割への応用,さらには位置選択的置換反応への応用技術を検討した. 界面活性剤被覆酵素の酵素活性は、調製時に酵素を溶解する緩衝液のpHに大きく依存し、界面活性剤により被覆されたリパーゼは、緩衝液中での高活性を与えるコンホメーションを有機溶媒中でも保持(記憶)しているものと推察された。さらに、界面活性剤被覆酵素の酵素活性は、被覆する界面活性剤の分子構造にも大きく依存した。 生体触媒による物質生産の例は食品・医薬品・医療・化学製品と多分野に及んでいる。特に光学活性化合物の一方の対掌体のみが必要となる場合や、ある化合物の特定の部位だけを変換したい場合、不斉触媒としての利用が今後ますます重要になる。本研究では、被覆リパーゼを用いることによって、(-)ーメントールが非常に高い転化率でエステル化されることが明らかとなった。さらに,薬物のイブプロフェンの光学分割に被覆リパーゼを応用した結果,高効率で分割できることが示された.また、本研究で開発した酵素複合体を用いることにより、ステロイド類の位置特異的変換反応が可能であることが明らかとなった。原料のステロイドは,通常の化学合成によってエステル化を行うと,ランダムに反応が進行する.しかしながら、酵素法を利用することによって,ステロイドの位置特異的エステル化が可能となった。
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