研究概要 |
本年度は、トンネル構造をもつチタン酸塩を合成し、その光特性および微細構造を調べ、種々の助触媒と組み合わせ高い活性をもつ光触媒を得ることを行った。形状の異なるトンネル構造のチタン酸塩として、長方形型トンネル構造をもつM_2Ti_6O_<13>(M=Na,K,Rb)、ペンタゴナループリズム型トンネル構造をもつBaTi_4O_9および層状構造をもつNa_2Ti_3O_7を大気下で1373〜1473Kで焼成法により合成した。これらのチタン酸塩はUV拡散反射スペクトルにおいて、400nmより光を吸収し、340nmで最大吸収を示すこと、およびこれらの吸収波長で起電流をもつことを見い出した。レーザーラマンスペクトルにおいて、トンネル構造を持つ、830〜860cm^<-1>に鋭い単独ピークが現れたが、層状構造のNa_2Ti_3O_7には顕著には出現せず、トンネル構造に特有のピークであり、これがTiO_6八面体内の短いTi-O結合に起因することを明らかにした。助触媒として、遷移金属(Mn,Pt,Cu,Co,Fe,Ru,IrおよびTa)の塩化物あるいは硝酸塩を含浸法によりNa_2Ti_6O_<13>およびBaTi_4O_9に0.2〜1.5wt%で担持し、大気下848Kで酸化処理あるいは水素雰囲気下で還元酸化処理を加え光触媒とした。閉鎖循環型の反応装置に光触媒を置き、トルエン酸化反応に対する光触媒の反応効率を(空気+トルエン)および(水蒸気+空気+トルエン)反応系で調べた。水蒸気の存在が重要であり、水の分解反応に対する光触媒活性が関連することが示された。酸化処理によってRuO_2を担持した場合に最も高い活性が得られることを見いだし、本研究における触媒の構造と反応効率との関係から、高い光触媒活性の発現には、歪んだ八面体構造を持つトンネル構造が有用であることを明らかにした。
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