本研究では、ペンタゴナルプリズム型トンネル構造のBaTi_4O_9についてボールミルによる機械的微細化およびゾル-ゲル法による調整を行い、その光触媒活性を評価した。前者のボールミルによる機械的微細化では、BaTi_4O_9をアルミナセルを用いて粉砕して用いた。粒子のサイズを十数μmから数μmまで微細化することは可能であったが、これにRuO_2を担持した場合の水の分解反応に対する光触媒活性は著しく低かった。この試料のX線マイクロアナライザー分析から、セルのアルミナが不純物としてBaTi_4O_9に混入するため光触媒能が低下することが示された。ゾル-ゲル法によるBaTi_4O_9作製では、チタンイソプロポキシドと水酸化バリウムを用いてゾルを作製し、600〜900℃の各温度で焼成してゲル化させた。レーザーラマン分光法およびX線回折法による構造解析、さらに電子スピン共鳴法による光励起種の挙動解析を行い、600℃の加熱よりBaTi_4O_9によるX線回折ピークが出現し、またラマンスペクトルにも、860cm-1の高波数に吸収ピークが現れ、これらの特徴的なピークは焼成温度とともに増加し、その結晶化が900℃の焼成まで進行する結果が得られた。この結晶化に伴い、光照射時に電子スピン共鳴スペクトルに格子のO^-(g=2.018、g=2.004)に帰属されるシグナルが出現した。さらに、RuO_2担時した場合に、水の分解反応において水素と酸素はともに生成し、その活性はBaTi_4O_9の焼成温度とともに増加し、900℃の場合に最も高い活性となった。これらの結果より、作製したBaTi_4O_9が、光励起電荷分離能を持ち、還元及び酸化反応を光触媒的進行させる機能を持つことが示され、本方法で用いたゾルゲル法により高い光触媒能を持つBaTi_4O_9が得られることが新たな知見として得られた。
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