研究概要 |
本研究では,酵素固体化担体としてグリシジルメタクリレート(GMA)高分子鎖を付与した.多孔性中空糸膜を用い、高性能酵素固定化材料の実現をめざした.多孔性膜を用いることで,ビーズ充填カラムに比べて高流速での処理が可能である.本研究では,疎水相互作用による吸着を利用して,フェニル基をもつPh膜に酵素を固定化し,活性を測定した.なお,酵素と基質の組合せとしてα-amylaseとデンブンを選んだ。 平均孔径0.2μmのポリエチレン製多孔性中空糸膜に放射線グラフト重合法を利用してGMAを付与し,GMA中のエポキシ基をフェニル基に,残りのエポキシ基を水酸基に変換した.得られた膜にα-amylase溶液を膜の内面から外面へ透過させ,α-amylaseを固定した.α-amylase固定量は1.1mg/15cm-fiberとした.つぎに、α-amylase固定化ph膜にデンブン溶液を膜の内面から外面へ透過させ,デンブン分解量を算出した. α-amylase固定化Ph膜について,SV(単位時間あたりの流量/中空部を含む膜体積)は,操作圧力0.15MPaで2300 1/hに達した.ビーズ充填カラムでの運転SV(2桁オーダー)と比較すると,PhOH膜のSVはその100倍であり,多孔性膜の高速操作性を確認できた.さらに,単位時間,単位膜体積あたりのデンブン分解量は測定したSVの範囲内で直線的に増加した.SV 2000 1/h付近まで,ほぼ全てのデンブンを分解した.つまり,供給律速にあり,デンブン供給量を増やすとそれだけデンブン分解量が増えた.これは,拡散過程に支配されることなくデンブンをα-amylaseへ対流輸送できるという多孔性膜の特長に起因する。
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