研究概要 |
本研究の目的は,流体ストレスの加わった系での,細胞の増殖および物質生産挙動を,極めて限られた回数の簡便な実験の結果を用いて推定する手法を提案し,その妥当性を検証しようとしたものである。 1。植物細胞の生存率測定法の検討:TTC法による生存率の測定は,従来指摘されていた以上に不確定であり,定性的な評価は可能なものの,明確な対照がない限り,定量的な生存率評価には使えないことを明らかにした。細胞の種類,培養齢,剪断応力,アグリゲートサイズに依存することを示した。 2。植物細胞の生存率に及ぼす層流剪断応力の影響:試作した装置を用いて,層流系での臨界剪断応力を測定した。その結果,培養時間とともに臨界剪断応力が増大する,最大剪断応力は細胞種に依存する,剪断力耐性は,指数増殖後期あるいは,定常期が最も高く,接種直後が最も弱い等が示された。 3。植物培養細胞に対する乱流応力の影響:1)撹拌槽中での臨界投入動力と臨界剪断応力の関係を検討した結果,模擬細胞粒子を用いた結果と,実細胞を用いた結果は,ほぼ同じ傾向を示し,提案した方法の有効性が示された。また,乱流場に置かれた細胞では,リソソームのキ-エンザイムである酸性フォスファターゼの細胞質濃度が上昇していた。2)1L撹拌槽内での酸素の消費速度を測定した結果,平均のエネルギー消散速度よりもむしろ,局所的な消散速度によって相関できるものとなった。3)ニチニチソウ培養細胞系では,生存率に影響を与えない範囲では比較的高い撹拌速度の方がアジュマリシンの生産を促進することが明らかとなった。4)同じ平均エネルギー消散速度のもとでは,局所のエネルギー消散速度のより小さいアンカー翼の方がラシュトンタービンに比べて小さなアグリゲートを生成することが明らかとなった。
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