研究概要 |
本研究では、有機導電性高分子材料、有機硫黄化合物等を複合化して、従来の重金属酸化物などより高エネルギー密度を持つ二次電池電極材料を開発し、これまでに商品化されているものより軽くてエネルギー密度が高く、諸性能に優れた二次電池、キャパシター等を開発することを目的とした。本年度は、申請者らがすでに開発した高エネルギー密度正極材料である2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール-ポリアニリン複合膜の改良を試みた。まず、同複合材料の導電性を高めるために、ポリピロール誘導体を添加した。その結果、数時間程度であった正極の充電時間が、一時間程度までに短縮された。また、複合材料の反応機構等についても検討した。2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールの酸化電位およびその二量体の還元電位は、メルカプト基のプロトン解離状態やチアジアゾール環の窒素原子のプロトネーションの状態に強く依存することが分子軌道計算およびサイクリックボルタンメトリーよりわかった。各種チオール/ジスルフィドとポリアニリンとの間の電子移動反応については可視分光法により調べ、可逆な電子移動が可能であることが明らかにされた。また、電気化学反応に伴い失活したポリアニリンを2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールにより再活性化できることが確認され、これがより高い電圧でもポリアニリンが失活しない原因であることがわかった。また、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールとポリアニリンとの間に何らかの相互作用が働くことが赤外分光法により明らかにされ、これが円滑な電子移動反応に寄与している可能性が示された。
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