研究概要 |
Sm_2Fe_<17> (C, N)_xおよびNd (Fe, M)_<12> (C, N)_xを磁性材料として活用する場合、これをまず粒径〜3μmの単磁区粒子サイズまで粉砕する必要がある。従来、この粉砕にはジェットミル法とボールミル法とが使用されてきたが、前者は均一な粒径となる反面試料が酸化される、また後者は試料の酸化を防ぐことができる反面粒径が不揃いとなる等々、それぞれに一長一短があった。これに対して本研究では、界面活性剤を含む有機溶媒中でボールミル粉砕することにより、酸素含有量が低くかつ粒径が揃ったSm_2Fe_<17>N_x微粉体を作製することに成功した。条件を最適化して得られた磁性粉体の最大エネルギー積は40MGOeを上回る値となり、この際の酸素含有量はおよそ4000ppmであった。さらに、得られた高性能Sm_2Fe_<17>N_x磁性粉体の耐候性を向上させるために、ジエチル亜鉛(Zn (C_2H_5) _2)の光分解を利用して亜鉛金属の被覆を行った。その結果、亜鉛を被覆した試料(Zn/Sm_2Fe_<17>N_x)の耐酸化性は未被覆試料のそれと比べ著しく向上し、エポキシボンド磁石の熱硬化処理(不活性ガス中、150°C)でも磁気特性はほとんど変化しないことが明かとなった。特に、従来の電解質水溶液中での亜鉛メッキ法またはZn (C_2H_5)_2を熱分解あるいはプラズマ分解する方法と比べ、本方法で得られた試料では余分な酸素あるいは炭素不純物の混入がなく、良質の亜鉛金属膜で試料表面が均一に被覆されていることが明かとなった。 次に、得られたZn/Sm_2Fe_<17>N_x微粉体を原料としてボンド磁石を作製したところ、そのBH_<max>値は22.1MGOeにも達することが明かとなった。また、その耐候性ならびに温度特性も従来の未被覆試料と比べ良好で、大気中で6ケ月放置した試料のBH_<max>値の低下は5%以内であった(未被覆の場合は10%以上)。現在の亜鉛の被覆量は試料に対して1wt%前後であり、今後亜鉛の被覆量を増大させることにより、磁石特性はさらに向上するものと期待される。
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