研究概要 |
本年度は臭化銅(II)-t-ブトキシドを用いる新しい酸化プロセスの開発、及び三級アミンを用いるより経済的な銅(II)酸化剤の開発について検討した。 1.1,2-ジオールの酸化的開裂による非対称1,6-及び1,5-ジケトンの合成;シクロヘキサン-1,2-ジオン、シクロペンタン-1、2-ジオンを出発物質として順次グリニヤール試薬を作用させ相当するジオールに導き、銅(II)酸化剤で処理したところ酸化開裂反応が進行し、1,6-及び1,5-ジケトンが高収率で得られることが判った。 2.ヒドラゾンのgem-二塩化物への変換;塩化銅(II)とt-ブトキシリチウムから新たな銅(II)試薬を調製し、これを用いて脂肪族ケトン・アルデヒドから合成した無置換ヒドラゾンを酸化したところ、対応するgem-二塩化物が相当するハロゲン化ビニルの副生を伴わず選択的に生成することが判った。 3.1,2-ジケトンジヒドラゾンの酸化によるアセチレンの合成;1,2-ジケトンから誘導されるヒドラゾンに6等量の銅(II)酸化剤を作用させることにより、ほぼ定量的な収率で対応するアセチレンが生成することが判った。 4.新しい銅(II)酸化剤「臭化銅(II)-トリエチルアミン」の開発とヒドラゾンの酸化反応への応用;比較的高価なt-ブトキシリチウムの代わりにトリエチルアミンを臭化銅(II)と組み合わせ用いることにより、ヒドラゾンのgem-二ハロゲン化物への変換、1,2-ジケトンジヒドラゾンのアセチレンへの変換が可能であることが判った。これらの結果はこの新しい銅(II)酸化剤が広く有機窒素化合物の酸化に適用可能であることを示唆している。
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