研究概要 |
近年,様々なケイ素骨格を有するポリシランが合成されており,これらは新規なセラミックス前駆体としての可能性を有している。本研究では,ネットワーク状のシリコン骨格を有するポリシランをはじめとする種々のシリコン骨格を有する有機ケイ素ポリマーを前駆体としたSiC材料の新規合成プロセスの開発を行った。ネットワークポリシラン前駆体においては,その可溶性にも関わらずSi-Si架橋構造が存在することから,酸化架橋による不融化のプロセスなしに加熱処理によってSiCを形成できる利点がある。しかし,その合成は,110oCトルエン中での溶融ナトリウムを使用し有機塩化ケイ素化合物の反応を行うという,過激な条件下でのKippinng反応によって行われており,工業的にみて問題があった。そこで,より温和な条件下でのポリシランの合成条件の検討を行った。THF溶液中でマグネシウム電極を用いた電解法によりトリクロロオルガノシランの合成を試みたところ,ネットワーク状ポリシラン(ポリシラン)を合成出来ることが明かとなった。これによって,フェニル基,ブチル基,プロピル基,エチル基,およびメチル基を有するネットワークポリシランを高い収率で合成することができた。特に,ポリ(メチルシリン)は,ケイ素と炭素の比が1対1のポリマーであり,炭素比の少ないSiCの前駆体として期待される。しかし,この方法で合成されたプロピル基,エチル基,およびメチル基などの,小さなアルキル基を有するポリシリンにおいては,可溶性成分に対する不溶性成分の生成割合が高いことが問題となった。反応条件の制御や反応終了時の未反応末端基処理によって可溶性成分の割合の向上の検討を行った。さらに,セラミック前駆体としての新規有機金属ポリマーの分子設計・合成を目的として,種々のシリレン鎖とアリル基からなるσ-π共役系ポリマーや,ネットワーク状のGe-Ge結合を有するポリゲルマンに関する検討を行った。
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