研究概要 |
静止衛星を用いて通信と側位を一つのシステムで行う複合システムでは、衛星の位置を正確に知ることが正確な側位のための必要条件である.平成6年度、本研究室ではM系列を測距信号としたVSAT経由の通信回線を用いて地球局からJCSAT-1衛星までの距離の高精度測定実験を行い、約2mの測距精度が得られることがわかった。また、測距信号として用いた単発M系列をMPDデジタル相関器で検出するとき,しきい値と相関関数に対する不検出率および誤検出率の関係を明らかにした。 平成7年度には三つのVSAT地球局による衛星位置測定システムを想定し、親局で子局から衛星までの距離を測定する実験を行った。つまり、親局では自分を含む三つの地球局から衛星までの距離を測定し、衛星位置を求める方法を計画した。 実験方法として、一定間隔で親局は測距データをIDU、ODU経由で送信する。親局から送出した測距信号が子局で中継され、その折り返し信号の時間遅れΔTを測定する。従って、親局から衛星までの遅延時間ΔT_Mがわかれば、子局から衛星までの電波伝播時間ΔT_SはΔT/2-ΔT_Mになり、衛星までの距離が求められる。実測して得たデータの標準偏差は約3mである。従って、以前の実験で得られた親局から衛星までの距離測定誤差2mを用いて、子局から衛星までの距離測定誤差は3.6mになる。 実験結果で観測された測距装置による誤差(親局は2m、子局は3.6m)に基づいて衛星位置測定誤差解析を行った。衛星監視局を3局とも日本国内に置く場合、日本近海の移動体測位に最も影響の大きい95%誤差楕円体の短軸の半径は約4.4mである。さらに、二つの静止衛星を用いた測位方式で位置を決定するシステムに対する衛星位置測定誤差の影響について解析し、日本付近における移動体の位置決定に及ぼす誤差は15m以下(95%誤差円の半径)で高精度の測位が可能であることを示した。
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