研究概要 |
計算流体力学は現在船体周りの流れや抵抗の推定に応用され,船体形状の改良に実用化されようとしている.工学的観点からみた次のステップは,この計算流体力学を逆問題,すなわち,最適形状設計に応用することである.したがって本研究の目的は最適形状設計のための基盤整備,すなわち,形状の数式表現,流場解析,感度解析,最適化手法を3次元船体形状に応用する方法を開発することにある. 平成7年度は上記目的に沿って研究を実施した.すなわち,2次元問題で開発された,船体断面の数式表現,流場解析,感度解析,最適化過程のそれぞれを3次元船体形状に適用するように拡張し,既存の標準船型に適用するべく,計算コードの改良を試みた.作業は順調に推移し,試計算としてタンカー船型の標準船型である,SR196船型に対して粘性抵抗を最小化するという目的のもとに,船尾の形状最適化を実施した.形状変更関数には,Bスプライン関数を用い,流場予測にはレイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式と0方程式乱流モデルを基本とした計算コードを用い,最適化手法には内点法の一つであるアフィン変換法を用いた.得られた形状は,母船形に対して船尾をV型にするというものであって,これは従来の経験工学的手法から見ても妥当であった.また,この結果の妥当性を回流水槽での抵抗試験により確認した. 平成8年度においては,この手法を,多目的最適化問題に拡張することによって,さらに実用化を目指す予定である.
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