研究概要 |
本研究の目的は,安価で信頼性が高く,かつ操作の容易な一軸引張試験機を開発し,その詳細を一般に公開することである。 本年度はまず基準となる基礎データの採取を目指して,既存のサーボ試験機を使用した一軸引張試験をおこなった.その際,実験方法の改良を目指した検討も常におこなった.まず第1点として試験片のプラテンへの固定方法である.この問題はサーボ試験を使用するかどうかに拘わらず,一軸引張試験を行う際には常に問題となる重要な点である.ドッグボーン型をはじめとする整形試験片についてまず検討したが,整形には細心の注意を払う必要があり,本研究の目的とする.「学部程度の知識があれば1週間程度で操作ができること.」という趣旨と合致しないため,この方式は見送ることにした.ついで,円柱片の試験片を接着剤でプラテンに接着する方式を検討した.かなり強度の高い接着剤が市販されており,多くの場合この方式で実験できることがわかったが,接着剤が固まるまでの時間は比較的長い欠点があり,接着剤と接着方法については今後も検討を続ける予定である.第2点として変位の測定方法について検討した.一般に一軸引張応力下での変位は極めて小さく,変位の正確な測定は,サーボ試験機を使用するかどうかに拘わらず重要な点である.高精度の変位計(差動変圧器式,渦電流式など)の測定結果と試験片に直接貼り付けた歪ゲージの測定結果を比較・検討した結果,一部の剛性の極めて高い岩石を除いて,適切な変位計を選択すれば必要な精度の計測が可能なことがわかった.剛性の高い岩石の補正方法については今後検討する. また,簡易な一軸引張試験機を設計・製作して試運転を開始した.三城目安山岩を中心として幾つかの岩石試験片を用いた予備実験をおこなったところ,今回製作した試験機にても完全-応力歪曲線を得ることができた.定性的にはサーボ試験機を使用した結果ともちろん一致しているが,きめ細かい検討は次年度おこなう.
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