研究概要 |
水素などガス雰囲気下で行われる化合物半導体の結晶成長過程のその場観察法の開発を目指して,特に非線型効果の一種である表面和周波発生に注目して,線型分光法の一種である反射率差分光法と対比すると共に,従来の表面分析手法である低速電子線回折,オージェ電子分光法を併用して,化合物半導体への適用可能性を検討した.その結果,以下のことを明らかにした. まず,反射率差分光法により,GaAs清浄表面への化合物半導体の成長雰囲気として用いられる水素及び窒素の吸着過程を観測した.まず,水素吸着に関しては,表面のGaおよびAsダイマーに起因する信号の減少からダイマーの解離を確認し,一方,窒素吸着に関しては,As-rich表面と比べGa-rich表面が,窒化が起こりやすく,窒化の進行と共に,Gaダイマーの解離とGa-N結合の形成に関連すると思われる3.5eV近傍のディップの増大を観測した.しかし,信号は一般にブロードで,スペクトルの起源を議論するには十分でないことを示した. 表面和周波発生法の化合物半導体表面への適用可能性の検討に関しては,Nd:YAGレーザを一次レーザーとして,その2次高調波(532nm)とLiNbO_3結晶を用いた光パラメトリック効果により発生した2..6〜3.8mmの赤外光による和周波光測定系を整備して,GaAs表面からの信号の検出を試みた.具体的にはメタノール吸着したGaAs表面からの和周波信号を観測して,バルクの信号に重畳したメチル基の対称伸縮振動に起因する共鳴を観測した.さらにその入射角方位依存性を簡単なモデルにより解析することにより,振動ベクトルの方向を決定できることを示した.以上により表面和周波発生の化合物半導体表面における解析法を示し,化合物半導体表面においても十分有力な方法となることを示した.
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