研究課題
基盤研究(A)
化学励起酸素ヨウ素レーザーは塩基性過酸化水素と塩素との反応により発生する励起一重項酸素からヨウ素へのエネルギー移動過程で生じた励起ヨウ素原子により発振するレーザーである。本研究では超音速流れとすることでヨウ素の励起率を高め、レーザーの小型大出力化が可能となることから超音速流れにおけるレーザー性能について詳細に検討する。超音速ヨウ素レーザーにおいて励起酸素発生器で生成する水蒸気は励起ヨウ素原子失活の効率の良い衝突対であるために、水蒸気はトラップによって除去されるが、一部はトラップを通過して超音速ノズルに流入する。このときに、超音速膨張によって気体の温度は低下するので、水蒸気は凝縮する可能性がある。そこで、ワークステーションを利用して、準一次元または、二次元の流体力学方程式/化学反応式/凝縮の式を連立させて数値的に解き、水蒸気凝縮のレーザー性能に及ぼす効果をシュミレーションした。この結果、超音速膨張によって水蒸気は凝縮によって減少し、超音速ヨウ素レーザーの性能を向上させるように作用することが計算から実証でき、また、水蒸気凝縮による潜熱が流れ内に放出され、超音速流れ内の温度は増加し、レーザーの効率を低下させるように作用することが明らかになった。これらの相反する効果は総合的にはレーザー出力を低下させる方向に働くことが判明した。また、凝縮により生成する液滴の直径はレーザー波長より短く、レーリー散乱を発生させるが、これによる光の損失は無視できることが明らかになった。水分凝縮器を不要とする放電系では、一重項励起酸素を発生させ、ヨウ素原子の励起を効率よく達成させる事が必要となる。励起酸素はヨウ素分子の原子への解離にも消費されるので、励起酸素の生成効率の低い放電系では、高い効率でヨウ素原子を励起することは難しい。しかし、放電によるヨウ素分子の解離と解離したヨウ素原子への励起酸素からのエネルギー移動反応を利用すれば、高効率ヨウ素原子の励起が可能となる。これらの反応系で観測される発光を光スペクトルアナライザーで検出し、エネルギー移動効率の検討を行った。その結果、酸素とヨウ素を別々に放電して、その放電流れを混合することにより解離ヨウ素原子の効率の高い励起反応が進行することがあきらかになった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (18件)