研究概要 |
紫外レーザービーム可撓誘導系として,OHイオンをコア中にドープした純砕石英ガラス紫外ファイバーを用いた.対象としているレーザーは波長193nmのArF,248nmのKrFエキシマレーザーである.エキシマレーザー伝送では,純砕石英バルク中に常磁性のE′センターが生成され,その光吸収帯により紫外ファイバーの伝送率が低下する.この伝送率低下を抑制するため,コア・クラッドドーパントおよびクラッドの屈折率構造を実験によって検討した.その結果,コアドーパントはOHイオンに塩素を加えたファイバーよりも,OHイオンのみの場合に伝送率は高い.クラッドドーパントにはフッ素のみよりもホウ素を加えたファイバーの場合に伝送率は高い.クラッドの屈折率構造は,通常のステップインデックス型よりもクラッドの一部がグレーデッド型構造を持つ特殊な紫外ファイバーが良い.以上の結果より,コアドーパントにはOHイオンのみ,クラッドドーパントにはフッ素とホウ素,クラッドの屈折率構造はその一部がグレーデッド型構造の紫外ファイバーが最も伝送率が高いことが明らかになり,伝送率は従来の10%/mから40%/mに向上できた.レーザーパワー伝送では,ファイバー入射端面のレーザー損傷が問題になる.紫外ファイバーの単パルス伝送および連続パルス伝送の限界を調べた.その結果,単パルス伝送では入射エネルギー密度900mJ/cm2pulse以上で,紫外ファイバーの入射端面に損傷が見られることが判った.連続パルス伝送の場合はレーザーの繰返し周波数に依存し,周波数が高くなると伝送できる入射エネルギー密度は低くなることが明らかになった.今後はこれらの機構を解明し,紫外レーザービーム可撓誘導系の実用化を図る.
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