研究概要 |
薄肉断面部材で構成される骨組と板殻の組立構造からなる自動車車体構造を対象に,衝突エネルギ吸収安全車体の開発,実験的検証を目的として研究を進め,以下の成果を得た. 1 衝撃エネルギ吸収車体最適構造の設計システムの開発と基本部材の最適化・・・・最大軸圧潰力,平均圧潰力,最大加速度などを制約条件に薄板殻組立構造の衝撃吸収エネルギを最大とする最適設計システムを開発し,円筒,角筒などの基本構造についてそのリブ配置や板厚,リブ丈などの諸寸法も設計変数とする場合のエネルギ吸収効果について検討した.その結果,円筒または角筒全体が一つの柱として全体座屈を発生する限界までの円筒,角筒肉厚を増大,半径または一辺の辺長を減少させ,さらに円筒半径,角筒辺長の半分程度の大きなリブを付けることによって吸収エネルギも増大できることを確認した. また厚手の円筒を対象に局部的に板厚を減少させて溝を付けたときのエネルギ吸収効果について,溝の間隔と数,溝深さなどをパラメータとして種々検討を加えた.検討した範囲では溝によって圧潰パターンをある程度制御できるものの,吸収エネルギを大幅に増大できる溝パラメータを見い出すことはできなかった. 2 衝撃吸収安全車体構造の検討・・・・1の最適設計システムを基に,衝撃負荷に対する搭乗者位置での最大加速度,最大圧潰力,重量などの制約条件下で,全衝撃エネルギ吸収能,荷重分散効果を目的関数とする車体主構造モデルの最適化を検討し,車体全体に配置したフレーム構造によって全体の圧潰,エネルギ吸収を実現できる可能性を見い出した.衝撃吸収能のより高い構造の提案には実験,解析による検討が必要である. 3 衝突実験装置の改良と衝撃吸収能の実験的検討・・・・ゴムチューブによる加速により短距離で時速50km/h程度の衝突実験が可能な実験装置を試作した.この衝撃圧潰試験装置を用いて1.のリブ付き円筒や角筒モデルおよび溝付き厚肉円筒の衝撃圧潰実験を種々実施して,ほぼ最適設計結果を実証する実験結果を得た.また,衝撃吸収部材を組立てた車体基本構造モデルを用いた衝突実験を実施して衝撃力分散効果,吸収効果について検討し,2.の設計・解析結果を確認した.しかし最適設計の結果は,いまだ搭乗者の安全性を確保するに十分な衝撃吸収能が得られているとは判断できず,さらなる構造設計の検討が必要である.
|