研究課題
本研究は、最近著しい発達を遂げている損傷力学と有限要素法を組合せ、構造要素における劣化・損傷の発達と微小空隙の生成・合体による巨視的き裂の発生、ならびにその成長による損傷・破壊の全過程を正確に計算機シミュレーションする技術を確立しようとするものである。これによって各種大型構造物に対する破壊予測・寿命評価システムを開発する。本年度の研究実績は次のとおりである。1.本研究室既設の複合負荷電気-油圧サーボ材料試験機により、原子炉圧力容器用鋼SA508の平滑丸棒試験ならびに円周切欠き丸棒試験の定ひずみ低サイクル疲労試験を行い、損傷に伴うヒステリシス曲線の変化、弾性係数低下等の測定と、比論損傷の発達過程を観察した。2.上記の平滑丸棒試験の結果から低サイクル疲労に対する損傷力学理論を定式化し、これを用いて有限要素プログラムを開発するとともに、切欠き丸棒試験片の疲労損傷過程を解析した。開発したプログラムにより、疲労寿命の他、試験片内の損傷分布を記述できた。3.損傷発展式の系統的定式化の枠組みを構築するため、本年度はGibbsの熱力ポテンシャルに基づく弾塑性損傷理論を展開した。その妥当性を検討するため、球状黒鉛鋳鉄の組合せ弾塑性実験を行い、損傷面と損傷ポテンシャルの存在を証明した。4.高温機器の破壊を支配するクリープき裂進展の解析システムを確立するため、前年度に引続き、解析結果の有限要素依存性の原因を検討し、損傷発展式の応力敏感性と、き裂先端応力特異性に対する先行損傷場の影響を明らかにした。5.上記のクリープき裂進展解析の妥当性を検討するため250℃における銅円管試験片に対する多軸クリープ破壊実験を行った。
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